地銀王者の失墜!?スルガ銀行不正融資問題の全貌と今後のゆくえ

最強の地銀として、君臨してきたスルガ銀行。
今、スルガ銀行HPのトップには、「金融庁より行政処分を受けました」という報告と関係者や顧客へ迷惑を詫びる文章が掲載されています。

 

これまで、スルガ銀行と言えば、投資家や経済アナリスト、さらには、金融庁の元長官などからも高く評価されてきました。
全国でも都市銀行並みの知名度で、「地銀の成功モデル」「その新たなビジネスモデルに学ぶべきだ」とスルガ銀行の姿勢を絶賛する声が多く上がっていたのも事実です。

 

そのスルガ銀行が、シェアハウス「かぼちゃの馬車」での不正融資問題から一転。
金融業界のコンプライアンスとは何だったのか?と誰もが目を疑うような前代未聞の不祥事が、次々と明るみに出てきたのです。

 

一連の報道から、「こんなに問題を抱えて、スルガ銀行は、大丈夫なのか?」と思われた方も多いはずです。

 

また、今回の件は、信じるべき「評価の目」は、どこにあるのか?を考えさせられる問題でもありました。
スルガ銀行を高く評価したまなざし、銀行の審査の信頼性、そして、上司を信じざるを得ずにただただ言うなりになるしかなかった部下と利益が出ると信じて物件を買ったオーナーたち。

 

そして、それぞれの間違った判断が、今、金融業界全体を巻き込んで、大きく波紋を広げているのです。

 

金融庁からの行政処分を受けたスルガ銀行の経営は、今後どのようになっていくのでしょうか?
また、そもそもスルガ銀行の今回の一連の問題は、まだ挽回の余地があり「未来」が残されている、あるいは、反省と改善によって、存続を社会が容認できるといった程度のものだったのでしょうか?

 

それらを判断するためにも、今回は、スルガ銀行における不正融資問題の流れを確認し、その全容を解説していきます。

 

 

田辺華子(キャッシング大全専属ライター)

 

文筆家。書きたい人をサポートする「つくし舎」代表。3児の母。専門は、女性のライフステージとお金に関すること。大学を退職後、教育や執筆に関すること、また、結婚、妊娠、出産から老後まで、女性のお金に関することを中心に、セミナー講師、執筆を行っている。

 

 

スルガ銀行のシェアハウス「かぼちゃの馬車」への不正融資問題の概要

まず、そもそもの発端である「かぼちゃの馬車」をめぐる問題とは、どのようなものだったのでしょうか?そして、そこにスルガ銀行がどのように関わってきたのかということについて見ていきます。

 

株式会社スマートデイズ社・女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」をめぐるスルガ銀行不正融資問題の概要

「かぼちゃの馬車」は、株式会社スマートデイズ社(以下、「SD社」)の女性専用シェアハウスの商品名です。
このシェアハウスは、オーナーとなる30代から50代の会社員が将来への投資にと、銀行から一棟につき1億円程度の不動産融資を受けて建設されていました。
そして、その大半の融資は、スルガ銀行から出ていたという格好になっています。
これを不動産会社であるSD社が、一括借り上げというかたちをとり、サブリース契約によって、オーナーへの家賃収入を長期保証するという仕組みをとっていました。

 

通常、アパート経営をすると運営や入居者の管理など仲介業者が入らない限りオーナーが行うことになりますが、「かぼちゃの馬車」は、サブリース契約ということで、入居率等管理に関するすべてを不動産会社が行っていました。

 

オーナーは、この契約によって、SD社からの家賃収入でスルガ銀行に借金を返済していたのです。 

 

しかし、SD社は、突然、オーナー宛てに家賃補償額減額を通知。
その数か月後には、賃料支払いができなくなったことをオーナーに通知しています。

 

スルガ銀行への返済をSD社からの家賃保証によって賄ってきたオーナーたちが、同社への責任追及と契約違反について徹底追及の構えで向かっていったのは言うまでもありません。
このことが引き金となり、SD社は、シェアハウスオーナーとの契約時に書類の改ざんや虚偽の報告をしていたことが発覚したのです。

 

ただ、不思議なことに、SD社の会社概要に掲載されている取引銀行には、スルガ銀行の名前がありません。
あまりに大きな問題なだけに、故意に隠そうとしたのか?あるいは、会社概要を作成した時点では、取り引きが無かったのか?といった点については、誰も触れてはいません。

 

そして、問題発生当初、オーナーらの返済を一定期間待つなどの配慮を見せ、被害者に寄り添い、貸倒損失など自分たちも、あたかも被害者であるような雰囲気を出していたスルガ銀行も、それから間もなく不正を疑われるようになっていったのです。

 

この後、スルガ銀行では、融資書類の改ざんなどを行い、不正に貸し付けを実行していたことが発覚、不正融資の実態が次々に明らかになっていきました。

 

SD社の問題が報道された当初は、多くの人が、同社のずさんな経営が招いたことだと思ったはずです。
しかし、ふたを開けてみると、SD社を不正融資で支え、貸付で利益を得ていたのは、スルガ銀行だったという構図がくっきりと浮かび上がってきたのです。

 

スルガ銀行は、行政処分へ!その内容とは?

2018年10月5日、スルガ銀行は、金融庁から行政処分を受けることになります。
この行政処分は、銀行法第26条第1項の規定によるもので、「業務の一部停止命令ならびに業務改善命令」というものです。

 

業務停止処分を受けるのは、地方銀行ではスルガ銀行が初めてで、金融庁の資料から、2002年以降のデータを見てみると、国内の全銀行の内、業務停止命令を受けているのは、25件となっています。

 

命令の内容は、次の通りです。

@新規の投資用不動産融資の停止
対象となる融資:新規の投資用不動産融資の停止。
また、自らの居住に当てる部分が建物全体の50%を下回る新規の住宅ローン。
期間:6カ月間(20018年10月12日から2019年4月12日)

 

A法令遵守・健全な企業文化の醸成のため研修の実施
全ての役職員は、一定期間通常業務から完全に離れ、法令、融資業務に関する知識習得に専念し、健全な企業文化構築のために徹底を図る。

 

B健全で適切な業務運営のためにすべきこと

  • 経営責任の明確化
  • 法令等遵守、健全な業務運営態勢の確立と行員の意識向上と健全な企業文化の醸成
  • 管理体制の見直しと確立(反社会的勢力、テロ等に関わる資金管理体制の確立)
  • 公正な審査と管理、監査態勢の確立
  • スルガ銀行が所有する不動産の管理・保有し、創業家一家の影響を受けているファミリー企業との取引の適切な管理。
  • シェアハウス向け融資・投資用不動産融資の金利、返済条件の見直しなど、個々の債権者に適切な対応とそのための態勢確立。
  • 上記の確実な実行と持続可能なビジネスモデル構築のための管理態勢強化

 

C上記Bにおける業務改善計画を2018年11月末までに提出し、直ちに実行する。

 

D上記改善計画についての進捗状況を3カ月毎に報告する。

 

この命令による抜本的な業務改善で、スルガ銀行は、どこまで変わることができるのか?は、企業体質をどこまで改善できるかにかかっていると言えるでしょう。

 

スルガ銀行の懐事情〜いかにして不動産融資で利益を得ていたか?〜

2018年初旬、2500円前後で取引が行われていたスルガ銀行の株価は、約6年2カ月ぶりの安値を記録。
過去52週間の高値は2593円、2018年10月の変動を見ると、安値は476円となり、大きく下降していきました。

 

不正融資問題とスルガ銀行の収益

時を同じくして、同行は、不正融資問題の他、暴力団員への融資疑惑や顧客の定期預金の不正解約と流用などが報じられ、度重なる不祥事案件に2018年6月には、3月期連結決算を一部訂正し、最終利益は、前期比8割減と大幅に減少してきたのです。

 

このように2018年からの数カ月、事件発覚後のスルガ銀行人気は、一気に下降を見せてきました。

 

しかし、それまでスルガ銀行と言えば、静岡県屈指の歴史ある地方銀行で、地域の発展に貢献する地銀の成功ケースのモデルとして、広く社会に知られた存在でした。

 

2017年3月期、地銀64行の預貸率を見てみると、7割を超える銀行が赤字となり、マイナス金利政策からの経営不振で大変な状況の中にありました。
その中で、辛うじて黒字を出していたのが18行、中でも利ザヤ0.243%で2位にランクインした琉球銀行を大きく引き離し、2.012%の結果を出してきたのがスルガ銀行でした。

 

個人向け住宅ローンに特化したスルガ銀行のビジネスモデル

スルガ銀行の利ザヤは、他の地方銀行とはけた違いの(2位の琉球銀行との差)9倍に近い成績を見せ、断とつトップの座を2017年3月期まで5年間継続させてきました。

 

しかも、法人融資を10%程度、その他90%の個人融資で収益を上げてきたという実態に、どう真似すればそこまで利益を得られるのかと羨望の眼差しの中にも訝しげに見る人がいたことも事実です。

 

第三者委員会の報告書にも提出されていましたが、スルガ銀行が、個人向け融資に力を入れていくようになるのは2000年以降のことです。

 

その中でも、2010年以降は、住宅ローンなどの個人向け融資に特化していくようになり、問題発覚以前の約5年間は、融資事業全体の約8割を個人向けの投資用不動産融資が占めていました。

 

さらに、2009年から2016年までの投資用不動産融資額を比較してみると、約3倍に跳ね上がっているのです。

 

地銀再編と騒がれ、生き残り競争が激化していく中で、カードローンや住宅ローンなどの個人向け融資は、銀行同士の熾烈な顧客獲得合戦が繰り広げられていきました。
思うように利ザヤが取れないという多くの銀行の中で、時代を逆行するように投資用不動産融資による収益が、突出してきたのがスルガ銀行だったのです。

 

そのあまりの突出ぶりに、魔法のような戦略だと思った人も少なくなかったに違いありません。

 

この大きな利ザヤの影に、善悪の区別も分からなくなるほどに恫喝される行員や一心不乱に成績向上に励んだ行員もいたのでしょう。
これだけの伸びをたたき出してきたわけですから、そこに、独自の利益向上ルートがあったのも間違いないでしょう。

 

さらに、給与直結の営業ノルマがあったことは、以下の報告からも垣間見ることができるでしょう。

 

スルガ銀行役員報酬&行員給与

そんな折、2018年スルガ銀行が不正融資問題で揺れる最悪のタイミングで、3月期決算の上場企業の役員報酬ランキングで、岡野光喜会長への報酬が1億9700万円と報じられました。
また、時期を同じくして、国内の銀行員給与ランキングでは、800万8000円で2位をマーク。
2017年の3位から順位を一つ上げ、5年連続首位をキープしているメガバンクの三井住友銀行(810万5000円)に追いつく勢いを見せました。

 

スルガ銀行の融資に苦しむオーナーがいる一方で、騒ぎの渦中にいる同行役員や行員の懐は温かいという遣り切れない結果が報じられたのです。

 

持っても、売っても借金地獄の「かぼちゃの馬車」で一番の被害者は、誰?

スルガ銀行に端を発した不正不動産融資問題は、その後、スルガ銀行以外でも次々と発覚し、大きな社会問題として世間を騒がせています。

 

これら不動産融資に関する一連の問題は、シェアハウス「かぼちゃの馬車」で有名な株式会社SD社の破綻によって、スルガ銀行の不正融資での介入が、取り沙汰されるようになったことに端を発しています。

 

中でも、シェアハウス「かぼちゃの馬車」のオーナーにおいては、中堅サラリーマンでありながら1億円以上もの借金を抱えた例がほとんどです。
「700人以上が破産か!?」と報じられ、持っても、売っても借金地獄のその物件によって、建築会社に代金未払いで起訴された事例や離婚、自らのマンションを売却するなど、多くの人の人生を狂わせ、2018年春には、返済を苦に自殺者まで出してしまいました。

 

さらに、オーナーのほとんどが、年収700万円以上の高給取りであるが故に、破産申し立てをしても、裁判所側で支払い能力があるとの判断が下されているようです。
これによって、多くのオーナは、破産が認められず、返済から逃れることができない状態に陥っているのです。

 

しかし、シェアハウス「かぼちゃの馬車」を購入するために融資を受けたオーナーに対して、社会の意見は大きく2つに分かれています。
あまりの被害の大きさに同情する意見が多い一方、被害を被ったと言えども、オーナーは、「消費者」ではなく「投資家」であるのだから、「銀行や不動産会社を責める権利はない」、「あくまで自己責任だ」という声も聞こえます。

 

ただ、自分の情報が改ざんされていると知らずに、通常は受けられない融資が、書き換えられた書類によって成功し、それによって、銀行側と不動産会社に利益が渡っていたとすれば、オーナー側が、騙されたと思うのは当然でしょう。

 

さらに、一般的に、個人が、私的な利益のために書類を改ざんし、取引相手を騙していたのだとすれば、これは、列記とした詐欺罪で、刑事責任を問われる立派な犯罪として扱われるはずです。

 

問題が明るみに出た当初、スルガ銀行の不適切融資金額は1兆円規模と騒がれ、「かぼちゃの馬車」関連の融資は、700人以上と言われてきました。

 

しかし、その金額もこの数カ月の厳しい追求によって大きく膨らんでいます。
2018年10月時点でのスルガ銀行の発表では、「かぼちゃの馬車」の件を含み、現段階で把握できている書類改ざん等の不正件数は1546件。
不動産融資残高は、約1兆9000億円で、業務停止命令期間中の調査によってさらに増加する可能性を示唆しています。

 

この問題に関連するのは、不動産会社、銀行、そしてオーナーの大きく3者に分かれます。
ただ、問題に見合った重さの代償をそれぞれが払っていると言えるのでしょうか?

 

株式会社SD社は、破綻し、スルガ銀行は、6カ月間の一部業務停止処分となりました。

 

しかし、これだけの社会問題に発展したにもかかわらず、果たして、これらの代償で、社会が納得するかどうか?大いに疑問が残るところです。
しかも、一個人としての人生を狂わせ、生死をさまようほどの問題を抱えたのは、オーナーだけではないでしょうか。

 

これは、オーナーに課された返済金額の一例ですが、返済額は、土地建物代で1億円以上で、毎月の返済額は60万円程。給与の手取りが、60万円程で返済額が家計を上回っているという人で溢れているようです。

 

オーナーは、例え自己破産ができたとしても、財産をすべて失うことになり、返済をしていくとしても、給与と同等の借金返済額を抱えていくことになります。
返済については、スルガ銀行がコンサルティングを入れて、少しでもオーナーが収益を上げられるような対応や元本一部カットなどの配慮があるようですが、それでも、多くの借金が残ることに変わりはありません。

 

オーナーが受けた融資額は、そもそもスルガ銀行によって、改ざんされた収入証明書によって決定されているわけですから、そのほとんどのケースで、返済能力をはるかに超えた借金を抱えているに違いないのです。

 

それをオーナーは一般の消費者というよりも「投資家」だから仕方がないと片づけてしまうのは、あまりに酷な気もしますが、投資家であるなら銀行の不正までも見抜く、先見の明を持っていなければならないということなのでしょうか?

 

スルガ銀行の不正融資問題まとめ〜第三者委員会報告書から見えてきたスルガ銀行の闇の横行を解説〜

2018年9月7日、スルガ銀行は、第三者委員会から調査報告書を受領し、即公開しています。
この第三者委員会からの報告書については、「やはり黒だった!」「闇の横行だ」などという声がある一方で、「なぜかすっきりしない」「肝心の部分がうやむや」という方の声も多く見受けられました。

 

同日、スルガ銀行が関係各位に向けて出した「第三者報告書の受領と今後の当社の対応について」という文書には、「改ざん」「偽造」という信用第一の金融業に不相応な文字が並びました。

 

つい一年前に自分たちの新たなミッションは「お客様のニーズに応え」「夢前案内人としてお客様の人生やビジネスをより良い方向へ導く」ことと表明していたスルガ銀行。

 

それにもかかわらず「お客様のご意向に合わないフリーローン契約」が行われていたとは、企業の何を信用すべきなのか?そして、企業はそんなに重要性の低いミッションを表明するものなのか?と疑わざるを得ない内容が、短い文章の中に並んでいました。

 

さらに、企業の不正への陳謝にありがちではありますが、同行の不正が「認定された」「ご指摘いただいた」という文のくだりは、「自分たちが実行した」あるいは「実行させられた」というニュアンスを遠ざけ、あまりに、他人事という印象を受けます。

 

ここでは、第三者委員会報告書を基に、スルガ銀行は、どのような不正を行ってきたのかを明らかにした上で、何が明らかになって、何が語られていないのか?について解説していきます。

 

第三者委員会報告書に見るスルガ銀行の不正融資問題まとめ

300ページ以上もの報告書を読んでいると、不動産融資に関する銀行業務の一切が不正にからめとられているように思われますが、簡単にまとめてみます。

 

@スルガ銀行不動産融資で発生していた問題

<債務者関係書類を偽装>
不動産ローンの審査に通ることができるよう利用者の資産や自己資金などの自己資金確認書類を偽装し、財務力があるよう見せかけた。
限度額を超える融資の場合には、収入証明書を偽装して返済能力を超えた融資ができるように取り計らい、団体信用生命保険の申込診断についても偽装を行っていた。

 

<物件関係資料を偽装>
担保原価額や融資限度額を上げるため、家賃収入を多く見せ、中古マンション等のレントロールやサブリース契約を偽装、また、物件の調査済み証なども偽装していた。
この他、家賃収入の偽装工作のため、架空の賃貸借契約を作成、賃借人募集の広告などを業者に命令して取り下げ、オーナーに見えないようにした。

 

<売買関連資料を偽装>
同行の融資限度額は、売買価格の90%となっているため、はじめから価格を上乗せして、虚偽の売買契約書を作成。
自己資金がないという場合には、融資を通すために、通帳ではなく手付金など領収証を偽装して証明することも行われていた。

 

<書類偽装の瀰漫>
これまでに多くの行員が書類等偽装に関わっていたことが分かった。
2014年から調査終了段階まで、フォレンジック調査だけで確認された偽装は、795件。
さらに多くの行員が、自ら偽装した、偽装を黙認した、偽装を疑いながら融資を行ったと答えていることから、相当数の不正があったとみられるが、第三委員会報告書では、その数を正確に示すことはできないとしている。

 

<行員の偽装への関わり>
上記のように、行員による偽装への多くの関与が認められている。
パーソナル・バンクでは、営業職員が多くの偽装を黙認したまま融資を行い、一部の営業職員に至っては、積極的に偽装に関与していた。

 

また、執行役員では、1名が直接偽装に関与していることが認められ、その他の執行役員においても、偽装に関与しながらも自らは現認せずに済むようにしていた。

 

<その他、偽装行為以外の不正>

  • カードローン、定期預金、保険商品などとの抱き合わせ販売(銀行法第13条の3第3号違反)の推奨
  • 不動産業者への審査条件の暴露
  • 繰り上げ返済を妨害する行為
  • 取引を禁止されている業者との取り引き継続
  • 不動産情報の提供
  • 業者からの高額な出張費の受け取り、キックバック受領の疑い
  • 業者に融資の説明を任せる

 

A上記の問題が発生した原因とは?

報告書には、上記の不正問題の原因が、細かく調べられていましたが、まとめると次のようになるでしょう。
「審査機能が機能していないこと」「暴走状態の営業部門」「経営陣のずさんな管理体制」

 

まず、極度のプレッシャーによって暴走状態だった営業部門の圧力によって、審査部門が全く機能せず、結果的にほとんどの融資が可能になっていたという点において、審査部門の独立性のなさが明白です。

 

さらに、そういった状態を放任しておいた経営陣のずさんな管理体制も、今回の大きな問題です。
不正が蔓延している状況を黙認し、営業職へのプレッシャーと高いノルマで、できなければ「お前の家族皆殺し」などと上司から恫喝を受けるといった状況は、不正を注意するどころか推進しているという状態でした。

 

上司の恫喝によって営業部員は、血眼になって融資先を見つけ、融資実行を阻止しようとした審査部員を上司が恫喝して、審査機能を停止させ、思い通りにならなければ上司は、人事に介入してまで、融資実行を押し通すといった悪循環が、ただただ繰り返されてきたのです。

 

そして、このようになってしまった背景には、スルガ銀行の収益構造が大きく関わっていると言えるでしょう。
スルガ銀行では、パーソナルバンクが、収益の核として銀行を背負うようになってきたことで、暴走が加速していったのです。

 

B第三者報告書で報告されなかったこと

不正融資問題発生の原因は、先にまとめた通りです。
そして、それらは、数百ページに及ぶ第三者報告書の細かな調査によって、報告されているわけですが、それでも、何か物足りないと感じるのは、「スルガ銀行」というブランドの成り立ちと、組織の風土や同族経営が今回の問題に与えた影響について、きちんとした見解が見られなかったからでしょう。

 

確かに、第三者報告書には、創業家出身の岡野光喜氏と実弟の故岡野喜之助氏の経営者責任については言及してはいるものの、創業家出身者が、どのように実権をふるい、「スルガ銀行」というブランドを作り上げてきたのか?企業風土と同族経営がどのような関係にあり、その企業文化に内面化された意識は、どのようなものだったのか?

 

その語られなかった点にこそ、今回の問題の核心となる部分が存在していると多くの人が感じたはずです。

 

今回の一連の問題から見るスルガ銀行の未来

スルガ銀行における不正不動産融資問題は、SD社や同行から返済能力に合わない融資を受けたオーナーたちだけでなく、多くの企業や機関、そして人を巻き込んだ問題へと発展してしまいました。

 

同行に関する不正疑惑が報じられ、第三者委員会報告書が公表されたされるとすぐ、今回の問題に関連する金融機関の不祥事疑惑、また、同様の不正不動産融資が、次々と明らかになってきました。

 

ゆうちょ銀行は、スルガ銀行の媒介商品での不正融資が疑われ、スルガ銀行のローン商品については、現在新規取り扱いを中止。
また、不動産投資仲介業TATERUと第二地銀の西京銀行もスルガ銀行の一件と同様の不正が行われていたと報じられ、社会問題化しています。

 

2018年10月31日には、同様の投資不動産融資問題で西武信用金庫に金融庁の立ち入り調査が入ると報じられ、その他の全国の都市銀行、そして、地銀に対しても金融庁は、11月末までに一斉に調査を行うと言明しています。

 

この一斉調査によって、ここで問題が留まるのか、あるいは、他行にも同様の問題が見つかり歯止めが利かない程に、問題が浸透しているのかについては、同調査の結果によって、変わってきますが、結果次第では、金融業界、ひいては不動産業界にとって、大きな分岐点となることは間違いありません。

 

このように今回の投資不動産融資問題は、金融業界だけではなく、不動産業界、さらには、サッカー業界にまでその波紋が及んでいます。

 

これだけ各方面に影響を出し、大々的に不正が報じられてしまったスルガ銀行は、6カ月の業務停止処分が解かれた後、不正を繰り返すことなく銀行を継続していくことができるのでしょうか?

 

この点について考えるためには、政府や金融庁、ひいては日本経済の動きと、スルガ銀行自体が抱える体質の2方向から考える必要があるでしょう。

 

政府、金融庁、そして日銀は、スルガ銀行問題をどう考えるのか?

 

今回の問題を考えるためには、「不正をしなければ生き残って来ることができなかったのか?」という点についても考えるべきでしょう。

 

スルガ銀行は、他の地銀とは比較にならない程、収益が大きいことで知られています。
他行に差をつけてケタ違いに利益があるにもかかわらず、発覚すれば大ごとになると分かっていながら、不正不動産融資でリスクをとってきたその背景では、何が起こっていたのでしょうか?

 

2018年9月に金融庁が公表した調査報告によれば、地銀は、全体の半数を超える54行で本業利益(貸し付け・手数料ビジネス)が赤字となり、そのうちの52行に至っては、2期以上連続して赤字という結果になっているという状況です。

 

さらに、連続赤字の地銀が、年々増加しているという状況にあり、打開策を考えなければならない深刻な状態が続いています。

 

それにもかかわらず、日本の経済は、2008年のゼロ金利政策、2016年のマイナス金利政策と銀行をさらに苦しめる政策が次々に導入されてきたのです。

 

今回のスルガ銀行における不正不動産融資には、地方経済の縮小や金融庁による地銀再編と地域に根差したビジネスを後押しするという名目での地域企業への融資の推進なども大きく関係していると考えます。

 

マイナス金利で、多くの地銀が赤字を抱えるような厳しい状況下で、金利が高い投資用不動産融資案件は、どの銀行でも欲しい案件であったのは言うまでもありません。

 

さらに、地域でも大きなお金が動く不動産会社の案件であれば、リスクを負って競争したとしても、獲得したいと考えるのが本当のところでしょう。

 

同地域での同業者間の競争激化の上に、好条件で融資を奪い、貸付リスクが高くなる融資でも実行していかなければ、存続できない状態の地方銀行。
その一方で、地方創生で地域を活性化したいと考える日本政府。
そして、「安定した収益」「健全性」「地域企業の生産性向上」、さらには、「地域経済の発展に貢献」を考えた上で、「金融仲介機能」を十分に発揮することを地銀に求める金融庁。

 

今回の問題では、スルガ銀行内の上司から部下に対する圧力という構図だけでなく、日本における経済の動きと政策を推進するトップの機関の発言が、下層機関に及ぼす影響や無言の圧力、その構造も表出したと言えるでしょう。

 

不正が横行していた一地銀の状況を見抜くことができなかった金融庁の責任はもちろんですが、不正というリスクを冒してまでも、利益を向上させねばならなかった地銀の状況とそうした環境に追い詰めた原因を追究した上で対策を練らない限り、また、同様の問題が発覚することは目に見えています。

 

また、銀行カードローンの過剰融資問題、不正不動産融資問題など、次から次へと繰り出す問題の中で、これ以上、事態を悪化させないためにも、政府は、金利政策について再検討することも視野に入れなければならないのではないでしょうか。

 

「遵法を超える正しさに沿う経営」を経営理念に掲げたスルガ銀行の大いなる矛盾は、同行の問題として、終息させてはならない日本経済の課題を背後に隠した大きな問題でもあるのです。

 

スルガ銀行の未来を左右する鍵は?

差別問題の構造を見ればわかる事ですが、人が、一度内面化してしまった意識を変えることは、とても長い時間がかかる大変なことです。
さらに、それは習慣化された行動を変えるよりも難しいものなのです。

 

スルガ銀行には、250年もの長い歴史があります。
この長い歴史のどの時点から、今回のように不正が起きていたとしても、不審に思わない、あるいは、不審に思っていても黙認してしまう企業体質が育っていたのか判断することはできません。

 

スルガ銀行の「2017年版ディスクロジャー誌」には、「コンプライアンス」「ガバナンス」といった言葉が、並べられ、「遵法を超える正しさに沿う経営」という経営理念や誌面全体からは、まさに、顧客にとっての「理想の企業」という印象が溢れていました。

 

しかし、発表から数カ月で、事態は一転、ディスクロジャー誌の発言は、張りぼてでしかなかったことが明らかになりました。
スルガ銀行は、「コンプライアンス」や「ガバナンス」を根底から考え直さなければならない状態であったことが、発覚したのです。

 

問題の不正が行われていた時期には、2017年版のディスクロジャー誌の報告期間と年度を同じくするものもあります。
だとすれば、どのような価値観で、法令遵守やコーポレート・ガバナンスといった言葉を平然と利用していたのでしょうか?

 

「死んでも頑張ります」という部下に対して、「それなら死んでみろ」叱責する上司の構図は、「ハラスメント」が命取りになる現代社会において、時代錯誤のような、一方で、歴史の長い、あるいは、同族企業によく耳にするような話です。

 

例えば、1の意見が正しいことは、明白であるのに、上が「それは、2が正しい」と言えば、2が正しくなってしまう絶対権力は、トップだけでなく、長い時間の中で、下部組織や企業全体に企業体質として、1人1人に沁みついているものです。

 

トップダウンの経営をいきなりボトムアップでやってみろと言われてもできないように、数カ月の業務停止処分期間だけで、体質が切り替わることは、考えにくいことです。

 

しかし、スルガ銀行に、「持続可能なビジネスモデルを構築するための経営管理態勢の抜本的」改革を求めるのであれば、この「企業体質」がキーになることは間違いありませんし、それをいかに行うかによって、スルガ銀行の未来が決定すると言っても過言ではないでしょう。

 

終わりに

今後、スルガ銀行の一挙手一投足に注目が集まることは言うまでもありません。
非常に、厳しい目が注がれる中で、どのようにしてこの状況を打開していくのか、信頼を失った後、このまま顧客離れが進んでいくのか?いずれにしても、「信頼」あっての金融業であるということを考えた抜本的な改革が必要になることは間違いないでしょう。

 

田辺華子(キャッシング大全専属ライター)

 

文筆家。書きたい人をサポートする「つくし舎」代表。3児の母。専門は、女性のライフステージとお金に関すること。大学を退職後、教育や執筆に関すること、また、結婚、妊娠、出産から老後まで、女性のお金に関することを中心に、セミナー講師、執筆を行っている。

 

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