合併?倒産? 傘下に入る?消費者金融業界、縮小の要因とは

前回の記事では消費者金融業界に対して過払い金返還請求がどれくらいの規模でどれだけの期間行われてきたのか?という点を詳しく調べてみました。
今回はその結果縮小を余儀なくされてしまった消費者金融業界全体について、どれくらいの規模でどのようにして縮小したかをまとめたいと思います。

 

目次

  1. 消費者金融業界は、どのくらいの規模で縮小してきたのか?
  2. 消費者金融業界縮小の要因とは?
  3. 「貸金業の適正化」
  4. 「過剰貸し付けの抑制」
  5. 「金利の適正化」

 

消費者金融業界は、どのくらいの規模で縮小してきたのか?

2005年に金融庁が「貸金業制度等に関する懇談会」を設置、2006年12月に最高裁判所で、利息制限法の上限金利に合わせて、出資法の上限金利が引き下げられ、グレーゾーン金利が撤廃されると、利用者による過払い金請求が認められるようになりました。

 

それまで、グレーゾーン金利で貸し付けを行ってきた消費者金融各社は、これらの定めに翻弄されていくことになったということは前回までに書いてきたとおりです。

 

 

それからの10年、業界縮小、経営圧迫、景気の落ち込みなど、俯きがちな話題ばかりが上ってきた消費者金融でしたが、実際には、どのくらいの規模で縮小してきたのか?という点を深掘りしてみます。

 

貸金業者は、都道府県登録業者と財務局登録業者に分けられていて、

 

都道府県登録業者 各都道府県のうち、1つの区域内に営業所や事務所がある
財務局登録業者 各都道府県のうち、2つ以上の区域に営業所や事務所がある

 

このように定義されています。

 

その登録業者数をバブル経済崩壊以降、景気にやっと下げ止まりの気配が流れ始めた1999年3月末の件数と過払い金請求額にも明るい兆しの見え始めた2017年と比較してみると、

 

1999年3月末では、バブルで大変な目にあったと予測されるも

都道府県登録業者:29,095件

財務局登録業者:1,195件

合計30,290件

となっているのに対し、2017年3月末を見てみると、

都道府県登録業者:1,581件

財務局登録業者:285件

合計:1,866件

と20年弱の間に大変な勢いで貸金業者が姿を消していったことが分かります。

 

しかし、実は、消費者金融の減り幅は、これだけにはとどまらず、長期的な推移を見ていくと昭和から平成のピーク時、1986年3月末には、都道府県登録 46,357件、財務局登録1,147件、合計47,504件もの貸金業者が、全国にひしめき合うように営業を行っていたのです。
東証一部上場を果たす消費者金融も次々と現れ(アコムプロミスアイフルなど)、派手なCMや宣伝広告、街のあちこちに掲げられた看板など、景気の良さを浮き彫りにするような様相を思い起こされる方も多いはずです。

 

しかし、都道府県登録業者、財務局登録業者を併せ、47,000件以上もあった貸金業者は、1988年を境に、(1987年36,935件)1万件以上の落ち込みを見せ、その後なだらかな下降線をたどってきました。

 

その数字が、さらに下降を見せたのは、金融庁によって「貸金業制度等に関する懇談会」が設置された2005年の18,005件でした。
さらに、2008年には9,115件と1万件を下回り、「改正貸金業法」が完全施行された2010年には、4,057件、改正貸金業法施行後の2015年には、2,011社とさらに減少していったのです。

 

金融庁の調べによれば、貸金業者へのアンケートから「廃業、不更新、登録抹消、その他」の減少要因として最も回答が多かったものが、「廃業」によるものでした。

 

そして、改正貸金業法完全施行前後で、消費者金融業界から撤退した企業が挙げた撤退理由は、

「過払い返還請求の増加で経営状況悪化したから」

「それが理由で破産してしまった」

「現在の状況では貸し付けが非常に厳しい」

「事業者部門を強化し、消費者金融業を行わない」

「貸付を止めることにしたから」

といったものでした。

 

さらに、業界縮小は、もちろん貸付残高にも大きく影響を及ぼします。

 

1999年に約54兆円あった貸付残高は、改正貸金業法が完全施行された2010年には29兆円となり、2000年から2008年までは40兆円代とほぼ横ばいの利益を得てきたにもかかわらず、法改正を境に一気に消費者金融業界全体の活気が削がれてしまうような状態へと陥っていったのです。

 

 

消費者金融業界縮小の要因とは?

このように、消費者金融業界全体が縮小してきた要因は、先にも取り上げているようにやはり、2006年に成立、2010年に完全施行された改正貸金業法と、それによって増大していった過払い金返還請求によるところが大きいでしょう。

 

かつて消費者金融と聞くと、到底支払えるはずのない利息、執拗な取り立てに人生を狂わすなど、たとえ健全な運営をしていたとしても「ヤミ金」と取り違える方が多かったのではないでしょうか。
逆に言えば、それだけ、サラ金問題やヤミ金の手口が、社会問題としてクローズアップされ、恐ろしいというイメージで人々に浸透していたほど、社会的に大きな問題となっていたからなのです。

 

 

借金苦を理由にした無理心中や自殺が多くなったことで、ヤミ金と多重債務問題、貸金業者の健全な運営に対する対策が同時進行で進んでいきました。

 

それが改正貸金業法です。
近年の消費者金融業界の縮小は、この改正貸金業法施行に端を発しています。

 

 

改正貸金業法が施行されるにあたって、前身の貸金業法から規制強化された点は、大きく「貸金業の適正化」「過剰貸し付けの抑制」「金利の適正化」だったわけですが、この3点は、それまでの貸金業者の在り方を根底から改革していかなければならない程、厳しい規制だったのです。

 

では、改正貸金業法によって強化された点は、どのようなものだったのか、以下、簡単に見てみましょう。

 

「貸金業の適正化」

貸金業者の健全な運営によって、違法行為や過剰貸し付けが行われないよう取り締まりが強化されました。
貸金業の運営に関する条件として、資本金を5000万円以上保有していなければ貸金業を営むことができないということになったのです。
かつての財産的基礎要件は、個人経営で資本金300万円以上、法人で500万円以上と定められていたものが、個人法人に関係なく5000万円以上に跳ね上がったことで、特に規模の小さな中小の貸金業者は、撤退せざるを得ない状況になりました。

 

また、貸金業者は、貸金業務取扱主任者の国家試験に合格し、事業所ごとに指定された数の貸金業務取扱主任者を配置することが義務付けられ、また、無登録営業に対しては、10年以下の懲役もしくは3000万円以下の罰金が科せられることになったのです。

 

さらに、広告やテレビCM等の内容や頻度、勧誘の方法や過剰な貸し付けの防止などについてのルールが一層厳しくなり、不当な取り立てに関する規制はもちろんのこと、契約に当たっては商品内容の説明など債務者の不利な条件での貸付を行うことのないよう違反行為を行った貸金業者に対しては、速やかに対処、処罰できるという方が導入されました。

 

かつては、奇抜で、派手なCMが多く見られた消費者金融の広告でしたが、この規制強化によって、しばらくは、自粛ムードで、広告も抑え込んだ感がありました。
ただ、最近、再び消費者金融の広告やテレビCM が目に付くようになってはきましたが、今では後から消費者ローンに乗り出した銀行カードローン広告の方が目立つと感じられる方も多いのではないでしょうか。

 

広告媒体を利用した広報は、認知度や知名度といった業績に直結する部分でもありますので、自粛とは言え、人目に付く頻度が減ったことは、各消費者金融にとっても痛手であったことは間違いありません。

 

 

「過剰貸し付けの抑制」

過剰貸し付けによる多重債務者の増加を未然に抑制するため指定信用情報機関が設立され、貸金業者は貸し付け審査の段階で、利用者の総借入残高、年収等、返済能力の把握することが義務付けられました。

 

これで、「審査無しですぐに貸します!」といった広告を打つことができなくなったわけです。

 

 

「過剰貸し付けの抑制」において、さらに、消費者金融の経営を苦しめたのが、総量規制の導入です。
ご存知の通り、この総量規制によって、年収の3分の1を超える貸し付けは禁止され、借入額が、50万円を超えるもの、総借入額が100万円を超える場合には、年収証明書類の提出を利用者から受け取ることが義務化されたのです。

 

 

これによって、それまで利用者の多かった収入のない専業主婦や銀行では借り入れが難しいとされ、消費者金融を利用してきた人々は、消費者金融からの借入が実質不可能となり、一方、そのような層の顧客からの収益が多かった消費者金融は、多くの利益をこの総量規制の導入によって、一気に失うこととなったのです。

 

具体的に、日本貸金業協会による借入者に関するアンケート調査を見てみると、総量規制導入以前、約1200万人存在した消費者金融の消費者ローン利用者のうち、収入の3分の1を超える借入を行っていた人は50.3%。
つまり、消費者金融のローン利用者のうちの半数以上は、総量規制によって、新たな利用ができなくなり、消費者金融の利益は、半分以下に落ち込むという結果となったのです。

 

「金利の適正化」

法による上限金利の引き下げ

総量規制の導入と並んで、消費者金融の縮小の要因として挙げられるのが、上限金利の引き下げとグレーゾーン金利の撤廃の2つです。

 

「グレーゾーン金利」とは、「利息制限法」の上限金利15%-20%と「出資法」の上限金利29.2%の金利差の部分を指します。

 

前身の貸金業法では、このグレーゾーン金利での貸し付けが行われていたために多くの利用者が高い金利を払い続けなければならず、これによって多重債務者が増加していったと言っても過言ではありません。

 

グレーゾーン金利撤廃を巡る過払い金請求の話は冒頭で解説した通りです。

 

では、なぜ、このように二重の法律の間で、貸金業者は運営を行うようなことになっていたのでしょうか。

 

この貸金業者に有利なからくりのような制度はみなし弁済制度と呼ばれています。
みなし弁済制度とは、簡単に、例えば、貸付を行う際に「利息制限法」の15%-20%の上限金利を超えてしまったとしても、「満たすべきある条件」が整いさえすれば、「出資法」の上限金利29.2%までの金利で貸し付けを行ってもよいというものでした。

 

さらに、みなし弁済制度で定められていた、「満たすべきある条件」と言われるものは、簡単にクリアものであったばかりに、ほとんどの貸金業者が、「出資法」の上限金利を適応させ貸し付けを行うという状態が続いてきました。

 

ただ、貸金業者側からしてみれば決して法を遵守してこなかったという訳ではなく、みなし弁済制度によって認められた営業範囲の中で、より高い収益を得るために行ってきたものでした。

 

しかしこの制度は法改正によって廃止され、出資法に従って貸し付けを行ってきた貸金業者はその後、結果的に10%前後の利息分の利益を収奪される結果となったのです。
言うまでもなく、貸金業者にとって、この金利引き下げは、大きな打撃となりました。

 

過払い金返還請求

また、消費者金融にさらなる追い打ちをかけたのが、グレーゾーン金利撤廃による過払い金の返還でした。
2006年1月、最高裁判所は、グレーゾーン金利での貸し付けとその利息を不当として、利用者が、過払いした部分の金額を返還することと判決が下され、それ以降、貸金業者は、過払い金の返還に追われることになるのです。

 

この件は、前回の記事で詳しく解説しています。

 

その後、貸金業者の収益は、利息返還損失引当金の繰入額によって激減し、経営圧迫の事態に落とし込まれたのです。
さらに、先に貸付残高の推移でも見てきたように、貸金業者は、利息返還損失引当金への充当から収益が悪化したばかりでなく、それによって、貸出余力も低下し、これまでの顧客への貸付はおろか、新規貸付に乗り出す経営的余力も削がれていったのです。

 

このようにして、資本金の少ない貸金業者は淘汰され、返済能力の低い顧客層を中心に貸し付けを行ってきた特に中小の貸金業者は、顧客を失い、利息返還損失引当金によって、収益を上げることができない貸金業者が続出するなど、消費者金融業界は、縮小を余儀なくされていったのです。

 

 

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